目の病のため、鍛鉄の仕事を諦めました。
じっくりと自分にできることを考えた末にたどり着いたのが、
薪を使ったアート【山の木アート】です。

はじめまして。浪越哲朗(なみこしてつろう)と申します。
私は2015年まで30年以上にわたり、鍛鉄の造形作家として全国各地の個人邸の門扉や手摺など、さまざまなものをデザイン・制作してきました。
常にオリジナリティあふれる作品づくりを心がけ、少なからずそれを達成できたと自負しています。

しかし、生まれつきの目の病――難病である「網膜色素変性症」が進行し、視野が極端に狭くなってしまいました。
進行が遅いこの病は、私が60歳になったとき、ようやく診断されました。
それまでは、「みんなもこういうものだろう」と思いながら過ごしていました。

岡山県に在住していた頃、足元が見えずに石垣から転落し、足を負傷。
このとき、上下左右だけでなく中心部の視野も大きく欠けていることに改めて気づかされたのです。
車の運転も断念し、どう生きていこうか悩む日々が続きました。

そんな中、ストーブ用にいただいた「薪」に心惹かれました。
薪割りをするのではなく、これを作品に変えたい――そんな想いが湧き上がったのです。
何度も作り方を試行錯誤しながら、薪を使った芸術作品づくりを始め、ようやく自分の目指す形が見えつつあります。

これまで、さまざまな種類の樹木を作品として仕上げてきました。
山で長い年月をかけて育った木々の「記憶」を残しながら、ほんの少し私の手を加えることで、その木の最後の姿を演出しています。

薪は、私の手によって新たな命を吹き込まれ、作品へと生まれ変わっていきます。

今の日本には、美しいもの、便利なもの、ありとあらゆる物があふれかえっています。
それは、企業の皆さまのたゆまぬ努力の賜物に違いありません。
しかし、町や村の片隅で、コツコツと素敵な作品を作り続ける人々も確かに存在しています。
私の作品を見て、何かを感じていただくことにより、少しでも心豊かな人々が増える事を祈っています。


薪から作品へと姿を変えていきます

薪ストーブで乾燥させています

薪に新たな命を吹き込みます


たくさんの作品を作成してきました


岡山在住時のギャラリー風景